『割れ窓理論』(ブロークン・ウインドウズ)とは?

提唱者/米ニュージャージー州ルトガーズ大学 ジョージ・ケリング


全国防犯協会連合会では、警察庁と共同歩調をとって、米・ニューヨーク市で成功した『割れ窓(割られた窓)理論』の日本での実践を呼びかけています。
 まず『割れ窓(割られた窓)理論』とは何なのか?それを知ったうえで、身近でできることから地域安全運動(防犯運動)をはじめてみませんか

米国の警察財団は、1972年、カンザスシティ(米カンザス州)で『防犯パトロール活動』を、ニューアーク(米ニュージャーシー州)では『警察官の徒歩パトロール強化』を実施した。このニューアークの徒歩パトロールが、『割窓理論』の基調となった。
 この成果を調べたケリング博士は、警察官の徒歩パトロールには、犯罪を減少する効果はないが、地域住民に安心感を与え、住民が警察活動へ親近感を増す効果があることに気がついた。
 『割れ窓(割られた窓)』とは、言葉のとおり、建物やビルの窓ガラスが割られて、そのまま放置しておくと、外部から、その建物は管理されていないと認識され、割られる窓ガラスが増える。建物やビル全体が荒廃し、それはさらに地域全体が荒れていくという理屈である。
 四、五十年前、米サンフランシスコでは、空家になった住宅にヒッピーが住みつき、美しい街が荒廃の危機に直面した経緯があった。
 つまり、『割れ窓理論』は、たった1枚の割れ窓の放置から起きる荒廃の始まりで、街は荒れ、無秩序状態となって犯罪は多発し、地域共同体を作っていた住民は街から逃げ出し、街が崩壊するというのだ。
 たった1枚の割れたガラス窓を対処することで、犯罪傾向は大きく変わらないのに、安全に対する住民意識が変わるのか。
 それは、窓ガラスを割ったり、ビルの壁に落書きをするなど軽微な事犯でも、それらも見逃さないという警察があるからだという。
 警察は殺人や強盗など重大犯罪だけでなく、日本でいう軽犯罪法違反の事犯もどんどん取り締まるという姿勢を見せた。それにより、住民は安心感を自ら作り出すという効果があるともいえるようだ。
 このケリング博士の理論は、米政治学者ジェームズ・ウイルソン博士(米UCLAで公共政策講座)と共同でアトランティック・マンスリー誌に掲載された。
 これを実践的に採用したのが、ニューヨーク市のR・ジュリアーニ市長だった。
 ジュリアーニ市長は、1994(平成6)年1月、NY市警察本部長にブラットン氏を任命。『割れ窓理論』を採用してニューヨークの街角から“割れた窓”の一掃を図った。
 このために警察官5000人を採用し、徹底した徒歩パトロールと軽微な犯罪の取り締まりに入った。同時にNY迷惑防止条例の積極的な運用も図った。
 ニューヨークのイメージは変わり、落書きで有名なNY地下鉄は、いまではキレイな車体で、安全な乗り物としてニューヨーク市民の足になっている。